花の魔女
「バレてないと思った?でも残念ね。あなたがこそこそ何かやってたことはお見通しよ。ここに来ることもわかってたわ」
ドロシーは本を手に弄んでいたが、徐に目の前まで持ち上げると、バリッと破り裂いた。
ドニは目をまるくして、無情にも床に落ちていく本の残骸を見つめる。
それをドロシーのヒールがぐしゃりと踏みつけた。
「誰にも邪魔なんかさせないわ。この部屋にはね、鍵とまじないがかかってるの。あなたはあいつを助けたかったみたいだけど、残念ね。暗示はしっかり効いてるみたいよ」
艶やかな笑みを浮かべながら、ドニの頬に軽く手をあて、ゆっくりと滑らせた。
ドニは顔を蒼白にして、小刻みに震えている。
「何をしたってもう手遅れよ。……私の呪いの成果を、あなたにも見せてあげるわ。大人しくあいつのそばにいなさいね、私が来るまで」
クスクス笑いながらドニから手を離すと、コツコツとヒールを鳴らして去って行った。
ドニはなす術もなく、床に散らばった本の残骸を見つめるしかなかった。