花の魔女

「フィオーレ!」


(うまくよけてみせると言ったのに……!)


フィオーレを包んでいた風が弱まり、ナーベルは目をこらしてフィオーレがいるであろう場所を見つめた。


霧が晴れるように風が消えて―――



ナーベルは目を見開いた。



フィオーレは無事だった。


余裕の笑みをこちらに向けて、平然と立っている。


「ど、どうして……?」


風は直撃したはずなのに……



信じられない、と首を振ったとき、ナーベルはあることに気がついた。


フィオーレのまわりを取り囲んでいる、あの光の輪。


カプセルのようにフィオーレを包みこみ、守っているようだ。


「それ…、もしかして」


ナーベルが驚きを隠せないで光のカプセルを指さすと、フィオーレはええ、と頷いた。


「先ほどの、蘭の花の粒子ですわ。主人が危険だと判断すると、こうやって包んで守ってくれるのです。これが花の持つ守りの力。そしてもうひとつが」


そこでフィオーレは木の下で寝転がって見物しているジェイクを振り返った。


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