花の魔女
水車小屋のそばを通り、森の中へ入っていった。
ラディアンが何も言わないのでナーベルも自然と無言になった。
ただ、手をひかれながら彼の背中を追う。
カサカサと、二人が落ち葉を踏む音が森に響く。
時折、小鳥が飛びたっては可愛らしい鳴き声を聞かせた。
ナーベルがその声に耳を澄ませてみたとき、ラディアンがその足をゆるめた。
「ここだよ」
ラディアンの声に顔を前に向けると、小さな小屋がひとつ、ぽつんと森の木々に守られるようにして立っていた。
「かわいい!」
ナーベルは小屋に駆け寄り、扉を開いた。
中にはやはり木でできた家具達が自分の居場所に落ち着いていた。
皆丸みを帯びていて、柔らかいと錯覚してしまいそうなほど温かみがあった。
ナーベルに続いてラディアンが中に入ってきた。
「ここは森の精に手伝ってもらって建てたんだ」
可愛らしい家具にみとれているナーベルにラディアンが言った。
「森の精?ラディアンは森の精と会ったの?」
ナーベルは目を丸くした。
森に精霊がいるとは言われていたが見たこともなかったので、こんなにあっさり言われると不思議な感じがした。