花の魔女
「散歩にいかないか?森を案内するよ」
「えっ」
ラディアンの誘いに、少しどうしようか迷った。
案内してもらうってことは、しばらくラディアンと二人でいなくてはならないわけで……
ジェイクは、残るのよね?
ナーベルは迷った挙げ句、散歩に行くことにした。
「行くわ。森を見てみたいし」
ナーベルの返事にラディアンは微笑んだ。
「わかった。下で待ってるから、ゆっくり準備しておいで」
ナーベルは頷き、すぐに浴室に向かった。
急ごうとしているわけではなく、ただ、ラディアンの笑顔にわけのわからない感覚に襲われた。
浴室に入るとすぐに、ナーベルは膝を抱えて座り込んだ。
――わからない。
こういうのは初めてだから。
なんだか胸の奥が疼くの。
私は怒ってるの?悲しいと思ってる…?
いいえ、そんな不愉快なものじゃない。
それに、ほんとうに初めて?
なんだか昔、小さいころに……
同じような感覚を覚えた気がするけれど……
だめだめ、早く準備しなくては。
ナーベルは頭を横に振り、蛇口を捻った。