花の魔女

「手は尽くします。ラディアン様は私にお任せください」


そう言って、ルッツはドロシーの方を視線で示した。

ドロシーはまだ動けないのか少し離れたところに座ったまま、ナーベルを見ている。


「彼女が、ナーベル様は早くレジス様のところへ向かったほうがいいと」


それの意味するところは、やはりここには闇の精霊がいるということ。

普通の魔法では太刀打ちできない。

唯一対抗できるのは、幸福の魔法、花の魔力を扱える者のみ。

フィオーレがいるとはいえ、安心はできない。

ラディアンの側に居たいが、彼らのことも心配だった。


ナーベルはラディアンの髪に触れ、額にそっとキスを落とした。

離れ難そうにラディアンを見つめたあと、意を決して立ちあがった。


「ルッツ…どうかラディアンを助けてね」


「お任せを」


ルッツにラディアンを委ね、ナーベルはフィオーレたちのもとへと向かうべくラディアンの側を離れた。






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