花の魔女
「ふぅん……」
ラディアンのお母様もなかなか……、と思っていると、ジェイクがクッキーをひとつくわえて立ち上がった。
「泉に行くんだったら、準備しないとな。その前にフィオーレを叩き起こしてこよう」
「お願いね。本当に叩かないでよ」
ジェイクはさあね、と言って二階に上がっていった。
ジェイクが階段を上がったのを確認すると、ラディアンは泉に行けることになって舞い上がっているナーベルの隙をついて口づけた。
「昨夜はお預けだったから」
驚くナーベルに、ラディアンは囁いた。
そして何事もなかったかのようにナーベルから離れていって、ナーベルはただ立ち尽くすしかなかった。
ジェイクに叩き起こされたフィオーレが、長椅子の上でひとり赤くなっているナーベルを見つけて、首を傾げた。