花の魔女
このマフラーはラディアンのために編んでいるものだ。
ラディアンがこのマフラーをつけてくれることを想像すると、自然と口元がにやけてしまう。
「なーににやにやしてるの」
にやけていた真っ最中にいきなり声をかけられ、慌てて顔をあげた。
「ラ、ラディアン…」
そして彼の方を見て、はたと動きを止める。
いつもは魔法で短くしてあるはずの髪が、今日は長いまま後ろでひとつに束ねてあったのだ。
「どうしたの、髪?珍しいわね」
ナーベルが髪に視線を送りながら言うと、ラディアンはああ、と束ねた髪に手をやった。
「髪が短いと寒いんだよ。長いほうが少しマシ」
それを聞いて、ナーベルは嬉々として手元の編みかけマフラーを持ち上げて見せた。
「それなら大丈夫よ。ほら、もう少しでマフラーが編みあがるの」
そう言ってにこにこと笑うと、ラディアンは一瞬こわばったような表情をしたが、すぐに笑顔を浮かべた。
「……ありがとう」
ラディアンの声が弱々しいので、ナーベルは不審に思って手を下ろした。
「ラディアン…?」