花の魔女
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フィオーレが眠り込んでしまってからしばらく経ったある寒い日。
ナーベルは窓際に椅子を運んできて座り、せっせと編み棒を動かしていた。
編み物の手を休めたナーベルがふと窓の外を見ると、ちらちらと白い雪が降ってくるのが見えた。
「雪だわ」
ナーベルの呟きに、同じく窓辺にいたジェイクは無言で空を見上げた。
どんよりとした鉛色の空を見つめ、とうとう冬が来てしまったのだと悟った。
フィオーレは相変わらず眠り続けている。
彼女が目を覚ますのはまだまだ先だろう。
「俺、フィオーレの様子を見てくる」
口うるさい妻がずっと眠り込んでいるのは、静かだがやはり寂しい。
ジェイクは毎年、この季節になるとどこか晴れ晴れとしない気分で過ごしていた。
「ええ、そうしてあげて。フィオーレも喜ぶと思うわ」
ナーベルはそう言ってジェイクが二階に上がっていくのを見送ると、手元にある編みかけのマフラーに目を落とした。