花の魔女
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強制的に連れ出されたラディアンは、豪華なシャンデリアが浮かぶ広い部屋に立たされていた。
ラディアンの周りを護衛がぐるりと取り囲んでいる。
拘束こそされていなかったが、逃げられないということはわかっていた。
目の前には、三つほど段差があり、一番上に大きな椅子がある。
その椅子には、髭をたっぷりと蓄えた、自分の父親と同じほどの年齢らしき男が座っており、ラディアンを舐めるように眺めている。
「ようやく我が娘と結婚する気になったみたいだな」
その言葉でラディアンは男が誰であるか確信した。
「レジス・シャミナード……」
レジスはクックと笑い、椅子から立ち上がるとラディアンに近づいた。
「卑怯者」
ラディアンは恐れる様子もなくレジスを睨みつけ、周りの護衛達がラディアンを警戒して身構えた。
しかしレジスは臆する様子もなく、ふんと鼻で笑った。
「卑怯者か。別にそう言ってくれて構わない。我等は力を得るためにならどんなことでもやって見せよう」
レジスの言葉にラディアンは掴みかかりそうになったが、持ち前の冷静さでぐっとこらえた。
――ここで目の前の男に何をしようとも、どうにもならない。
自分が取り押さえられるだけだ。