花の魔女

*****

強制的に連れ出されたラディアンは、豪華なシャンデリアが浮かぶ広い部屋に立たされていた。


ラディアンの周りを護衛がぐるりと取り囲んでいる。


拘束こそされていなかったが、逃げられないということはわかっていた。


目の前には、三つほど段差があり、一番上に大きな椅子がある。

その椅子には、髭をたっぷりと蓄えた、自分の父親と同じほどの年齢らしき男が座っており、ラディアンを舐めるように眺めている。


「ようやく我が娘と結婚する気になったみたいだな」


その言葉でラディアンは男が誰であるか確信した。


「レジス・シャミナード……」


レジスはクックと笑い、椅子から立ち上がるとラディアンに近づいた。


「卑怯者」


ラディアンは恐れる様子もなくレジスを睨みつけ、周りの護衛達がラディアンを警戒して身構えた。


しかしレジスは臆する様子もなく、ふんと鼻で笑った。


「卑怯者か。別にそう言ってくれて構わない。我等は力を得るためにならどんなことでもやって見せよう」


レジスの言葉にラディアンは掴みかかりそうになったが、持ち前の冷静さでぐっとこらえた。


――ここで目の前の男に何をしようとも、どうにもならない。

自分が取り押さえられるだけだ。


< 67 / 244 >

この作品をシェア

pagetop