花の魔女
ラディアンの様子に、レジスはますます面白そうに笑った。
レジスが笑うたびに、口元の髭がかすかに揺れる。
「あの娘、ナーベルと言ったか?あの場で殺してもよかったのだが、お前がどうしてもというから慈悲をかけ生かしたのだ。お前は我等に感謝すべきではないのか?娘の命が救われたことに」
途端、シャンデリアの一部がパンと弾けて狙ったようにレジスに降りかかった。
レジスはさっとマントでガラスの破片を受け、護衛兵がラディアンを押さえこみ、両手を縛りあげた。
「この……」
逃れようとするラディアンをレジスは見下したようにふんと鼻で笑い、靴でラディアンの頭を踏みつけた。
噛み締めたラディアンの唇から血が滲み出る。
口の中に広がるのは、鉄の味。
「魔力を抑えるこの部屋で、まさか魔法が使えるとはな。だが、やってはいけないことだろう?」
そう言って護衛兵に連れていくよう指示した。
ラディアンは護衛に引きずられるようにして部屋から連れ出される。
「忘れるな。お前の行動に娘の命はかかっているのだぞ」
扉がしまる瞬間、勝ち誇ったような声がラディアンの背中を刺し、ラディアンは息を飲んでその場に崩れこんだ。