夏の幻
……………
初めてこの洋館に入った時と同じような匂いがした。
埃っぽさも何も変わっていない。
変わったのは、俺の中の気持ち。
…ミーコがいるというだけで、埃も軋みも何も気にならなくなる。
俺は決心を固めて、部屋のドアを開けた。
キィッというあの音が、俺を迎え入れてくれる。
…あの衝撃が蘇る。
今思えばあの瞬間から、この想いの種は芽吹いていたのかもしれない。
あの椅子には、愛しい人の姿があった。
「…ミーコ」
俺は精一杯の声で呟く。
ミーコの顔を見ただけで、胸が苦しい程いっぱいになった。
「シロ…?」
虚ろな目が俺を見つめる。
ゆっくりと立ち上がろうとしたミーコの足から、ふいに力が抜けた。
チリンと鈴が鳴る。
「ミーコッ!!」
俺は急いで駆け寄る。
倒れそうになったミーコを、寸での所で抱き止めた。
びっくりする程細く軽いミーコの体。
…その瞬間、俺の考えは確信に変わった。