飴色蝶 *Ⅱ*
「それじゃあ、駄目なの
 イオリを諦めなきゃいけない
 私がそう決めて、彼に別れを
 言ったの、もう・・・
 あの人には二度と逢えない」

拭っても拭っても
涙は溢れ止まらない。

「どうすれば
 
 この涙は止まるの?」

私の嘆きの声に、更紗は
答えてくれた。

「その涙を止められるのは
 私でも、ユキノでもないよ
 ・・・イオリ先輩だけだよ」

庵の元へ、戻る事ができない
のなら、残された道は唯一つ
涙が涸れるのを時間をかけて
ゆっくりと待ち続けるしか
ない・・・
 
更紗の言葉は、私の胸の
ずっと深い場所に突き刺さる。

「スミレ、逃げちゃいけないよ
 彼だけを愛すって
 そう決めたんでしょう
 一生に一度の恋・・・
 だったら、もし彼に何か
 あったとしても、傍にいて
 受け止めてあげるべきじゃ
 なかったのかなぁ?
 彼の為だって
 あなたは言うけれど
 私にはそうは思えない」

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