~秘メゴト~
 『大切にしたいと思っている』


 それは紛れも無い本心だ。

 俺は姫乃をこれ以上ないくらい傷付けてしまった。

 だからこそ、もう泣かせたくはないし、これからは大切にしたい。


 けれど、これは恐らく負い目からくるものであって、愛情などからではないとは思う。



「そっか」 


 亀田はひとつ短く息をつき、ニヤッと笑った。


「なんだ、有も人並みにレンアイできんじゃん」


 恋愛、とは違う筈だ。

 おまえは知らないが、俺は姫乃に取り返しのつかないことをやっちまったからなんだよ。


「安心したよ。有がいい加減な奴じゃないのは判っているけどさ、どうもおまえは恋愛音痴っぽいから」


 恋愛音痴…? 俺を欠陥商品みたいに言いやがって。


「でも、そうやって自分の気持ちに気付いてるんならいいんだ」


 自分の気持ち―…。


「こんな有にそこまで想われちゃうなんて、やっぱり姫乃ちゃんはイイオンナなんだな〜。流石、学園のアイドルだ」





 昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。

 亀田は立ち上がると、俺に本を返して寄こし、今度はすっきりとした笑顔で続けた。


「姫乃ちゃん、泣かすなよ。優しくしてやれよな」

「……ああ」

「じゃあ、仕方ねえからオレは諦めてやる」


 亀田が俺の腕を思いきりぶっ叩く。


「大事にしてやってよ。…俺の分まで」


 そう言い捨てて、亀田はひらひらと手を振り、自分の席へと帰っていった。




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