I haven't eye.
その動物を
“彼女”と呼ぼう。
彼女に失礼だから。
彼女は私に聞いた。
「どうして泣いているの?」
私は
躊躇いもなく言った。
「愛を失ってしまったの」
泣く私に彼女はそっと微笑んだ。
「私はあなたの
悲しむ姿が見えないの
それはつらいことだわ」
私は問う。
「なぜ?
それは悲しみに
触れないってことよ?」
彼女は首を振った。
そして
“見えていない”という
一見他の動物と変わらない
ぱっちりした目で見つめた。
「悲しみがなければ
私は偽善者になるの」
彼女が言う
その意味が
私には分からなかった。
「無理はないわ
あなたは今
悲しみに触れているのだもの」
彼女は微笑む。