日本女児VS肉食獣

「トシはすげぇ良くしてくれた。俺に光をくれた…アイツも身体が弱くて、入院してたんだ。そして、俺は記憶を取り戻すことなく、親の元へと戻った…そして数年後、道端で乱闘してるトシを見つけた。あの頃とは全く違う印象だったけど、俺にはわかった…俺を救ってくれたトシだと…」

帳はフッと微笑した。

「わりーな、黙ってて。でも俺は、記憶が戻らなくても今があるからいーんだ。でも、トシは…トシだけは救いたい…」

ドンッ

コンクリートの壁を思いっきり殴った帳は、唇を噛み締めていた。

「ヤンキー、行くわよ」

みぃは一言、帳にそう言った。

「…帳、俺も行くから」

「…僕も、行くよ、帳」

「……チッウゼーッての」

帳が震えながら瞳を擦っているところは、誰も見なかった。



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