軌跡
『そうだったんだ。そんな大変なときに、ごめんなさい』
 何か言いたいことがあるのは分かっていた。そうじゃなければ、四ヶ月ぶりにメールなどしてこない。
『何か用事があったんじゃないのか?』
 二通目のメールを送った頃には、電車は北千住の駅に着いていた。ここからは地下鉄だ、走行中は圏外になる。
『いいの、気にしないで。こんなときに言うことじゃないから。ごめんなさい』
 思わせぶりな言い方、途切れ途切れの電波、睦也はそれらに苛立っていた。
『気になるだろ。おれは大丈夫だから、話してくれよ』
 駅に停車する度、新着メールを確認する。だが、返事は中々こない。途切れる電波、細々と停まる電車、一つ減った携帯の充電……。
 返事が来たのは、地下鉄から東急目黒線に乗り換えてからだった。
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