軌跡
「一万五千円だろ、十分高いけどな……」
葛藤しながらも、鏡に写った自分の姿を見ていると、欲しい、という欲求はどんどん膨らんでいった。頭の中で電卓を取り出し、給料と家賃、光熱費、生活費、バンド活動費などを計算していく。少ない残高が、どんどん減っていき、最後には、雀の涙程しか残らなかった。
それでも、もっと切り詰めれば……。
「決めた、買おう。たまには贅沢しても、罰は当たらないだろ」
満足そうな笑顔を浮かべた優は、気が変わらない内にと、さっそく睦也をレジへと引っ張って行った。ただでさえ薄い財布が、中身のないサンドイッチのようになってしまった。さらば、我が汗と努力の結晶よ。
葛藤しながらも、鏡に写った自分の姿を見ていると、欲しい、という欲求はどんどん膨らんでいった。頭の中で電卓を取り出し、給料と家賃、光熱費、生活費、バンド活動費などを計算していく。少ない残高が、どんどん減っていき、最後には、雀の涙程しか残らなかった。
それでも、もっと切り詰めれば……。
「決めた、買おう。たまには贅沢しても、罰は当たらないだろ」
満足そうな笑顔を浮かべた優は、気が変わらない内にと、さっそく睦也をレジへと引っ張って行った。ただでさえ薄い財布が、中身のないサンドイッチのようになってしまった。さらば、我が汗と努力の結晶よ。