サクラノコエ
「……歌はいい……」

話をごまかして本題に入ろうとしない俺に、理紗はポツリとそう言うと、ついに昨日のことを切り出してきた。

「昨日、見たよね。真衣のこと」

単刀直入な理紗の言葉に、心臓が大きく跳ね上がる。

「真衣……?」

俺は変わらず、理紗に背を向けて答えた。

理紗の視線を受ける背中が妙に熱い。

「悠人くん、こっち向いてほしい」

理紗の声が震えている。理紗は俺の態度に、泣きたいくらい不安になっている。

振り向いてやらないと……

理紗の方を見てやらないと……

気持ちはあるのに、体が振り返ることを拒否する。

胸が苦しい。

張りつめた空気が二人を覆う。

< 276 / 454 >

この作品をシェア

pagetop