サクラノコエ
再び二人だけになった部屋の中、俺は大きく息を吐き、覚悟を決めて理紗の方を向く。

理紗は唇を噛みしめ、捨てられた子犬のような心細そうな表情で座ったまま俺を見上げている。

ここにいるのは、俺が好きになった理紗なんだ……

俺は手に取ったマイクを元の場所に戻し、理紗の隣に再び腰掛けると、

「悪ぃ」

と言いながら、いつものように軽く理紗の頭を撫でた。指先から伝わるいつもと変わらぬ感覚が、理紗への恐怖心を少し和らげていく。

「ううん」

理紗は俺の緊張が少しゆるんだのを感じ取ったのか、小さく笑顔を見せて首を振る。

その健気な姿に、俺はなんだか涙が出そうになってしまった。

話を聞くと言いながら目線を合わそうともせず、理紗に悲しい思いをさせた自分。

最低だ。
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