偽りの結婚
寝返りを打ったから気付いているはず。
もう目を覚ましていて、また私をからかって楽しんでいるのかもしれないわ。
「ラ、ラルフ…起きているんでしょう?」
おずおずと声をかけてみる。
……が、整った顔は眉ひとつ動かず微動だにしない。
本当に寝ているのかしら。
寝ているなら寝ているで、腕の中から抜け出せるかもしれない。
モゾモゾ………
そう考えてラルフを起こさないように慎重に動いた時。
グイッ…と力強い腕に引かれる。
「きゃっ!!」
離れようとする私の腰をグッと自分の方へ引きよせ、ラルフの厚い胸板へダイブする。
しかも腕枕をしていた手が髪の中に差し入れられ、後頭部が固定されてしまった。