偽りの結婚



寝返りを打ったから気付いているはず。

もう目を覚ましていて、また私をからかって楽しんでいるのかもしれないわ。




「ラ、ラルフ…起きているんでしょう?」


おずおずと声をかけてみる。

……が、整った顔は眉ひとつ動かず微動だにしない。





本当に寝ているのかしら。

寝ているなら寝ているで、腕の中から抜け出せるかもしれない。



モゾモゾ………


そう考えてラルフを起こさないように慎重に動いた時。

グイッ…と力強い腕に引かれる。




「きゃっ!!」


離れようとする私の腰をグッと自分の方へ引きよせ、ラルフの厚い胸板へダイブする。

しかも腕枕をしていた手が髪の中に差し入れられ、後頭部が固定されてしまった。




< 175 / 561 >

この作品をシェア

pagetop