偽りの結婚



そんなことを考えながら歩いていると、扉の前で執事の足が止まる。




「こちらが本日のサロンの会場になります。中で皆様がお待ちですのでお入りください」


執事に促されて入ったのは、一番南の部屋。





―――キィー…


「っ!!」


扉を開いて見渡した部屋に息を飲む。

書庫の閲覧室を思わせるようなガラス張りの部屋に、色鮮やかな花々が飾られ、壁に寄り添うように設置された本棚にはたくさんの本。

照明などなくとも、太陽の光だけで読書が楽しめるような部屋の作りに、グレイク侯爵夫人がどれだけ本の事が好きかが伝わってきた。



招待された人々は全て女性で、皆がソファーや床に座って話をしている。

年齢が若そうな令嬢も少しはいたが、ほとんどが私よりも年上。



やっぱり、本が好きな若い令嬢なんて少ないわよね…と心の中で思いながらも、心が躍る。




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