偽りの結婚



「ようこそいらっしゃいました、シェイリーン様」


部屋の一番奥の方からこちらへ歩を進める貴婦人から声をかけられる。





「私、オリビア・グレイクと申します。今日はわざわざこんなところまで足を運んでくださってありがとうございます」


そう言って、ふわりと微笑むグレイク侯爵夫人はまさに品のある貴婦人だった。

齢は40代後半と言ったところだろうか…



今まで会ってきた若い令嬢がもつ雰囲気とあまりにも違った印象を受け、爵位を持つ女性でもこんなにも違うのかと感じた。






「こちらこそ、先日早々に帰ってしまったにも関わらず、またこうしてお呼び下さってありがとうございます」


絵になるような淑女を目の前に、少し緊張してしまう。



「それから…どうぞ私の事はシェイリーンとお呼び下さい。年上の方から敬称を付けて呼ばれるのには慣れていませんで…」


正直なところ、モニカからも敬称を付けて呼ばれることが苦手だった。



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