偽りの結婚



「分かってくれたなら僕を睨まないでくれ。可愛い顔が台無しだよ?」


私の頬に手を当てながら機嫌を伺うラルフ。

そんな事これっぽっちも思ってないくせに。

令嬢が喜ぶような極上の笑みを浮かべながら甘い台詞を吐くラルフに心の中で呆れる。







この一週間いかにラルフが遊び人であるかが分かった。

世間一般ではこの状況は新婚にあたるのに、夫はほぼ毎夜どこへやら出かけている。

ちょっとは世間を気にしてはどうかと思う。

が、相手はラルフ。




結婚しても女性からの人気は冷めず、競って第二の妃の席を狙っているようだ。

理由は“あんなみすぼらしい伯爵令嬢が王子の心を射止めたのだから、私達にも王子の心を動かせるかもしれない!”…だそうだ。

そのため、王子が夜遊びをしているにもかかわらず、誰も咎める者がいない。



それはそうね、あの会場で一番地味だった自分が選ばれるなんて、みんな納得しないでしょうしね。

どうせならもっとふさわしい人を選べば良かったのに。

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