Parting tears
 あの日、確か十一月くらいだと記憶しているが、ニュースを見るとテレビで獅子座流星群のことがやっていた。いつだったか、和哉と一緒に見に行く約束していたなぁと、私はぼんやり思い出している。

 そんな時電話が鳴ったので、和哉からだと思った私は、ディスプレイも見ずに急いで出ると武山だった。がっかりして、声のトーンが一気に下がる。


「結麻ちゃん、今日俺と一緒に獅子座流星群を見に行こうよ」


「行けません。私約束がありますから」


 冷たくそう云って一方的に切ったのだが、武山は何度も掛け直してきた。
 私は心底うざいと思ったと同時に、自宅に来られたら困ると、慌てて家を飛び出した。
 行く先は和哉のところである。

 そして、走りながら和哉に電話した。


「和哉、私だけど今会いに行くね」


「本当か?! 電話しようと思ったんだけれど、何となく掛け辛くてさ。会いたいよ結麻。俺待ってるから」


 和哉は嬉しそうで、あの綺麗な笑顔が目に浮かぶようだった。

 でも武山にしつこくされていることは、和哉には相談出来ない。何故なら内緒でサッカーをしていることがばれてしまうからである。

 私は憂鬱な気分を払拭するかのように、首を振ると全力で走っていた。

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