Parting tears
 武山を睨みつけると、私は一人で歩き出したのだが、後ろで和哉と武山が話しているのが聞こえる。


「俺、結麻と行きますんで、失礼します」


「じゃ俺は、今日のところはとりあえず帰ることにするよ」


 武山は帰って行ったらしく、後ろからは和哉が追いかけてきた。

 しばらく私も和哉も黙って歩いていたのだが、高山台公園に着いた頃、和哉が低い声で云った。


「結麻、ちゃんと話そう」


 私は無言で頷くと、和哉に促され、公園のベンチへ腰掛けた。


「ねぇ、さっきの人誰なの? 俺の女だって云ってたし、名前呼び捨てだったよね?」


「一つ上の先輩。でも私本当に関係ないのに、勝手に俺の女だなんて云うし、名前呼び捨てだし、私だってわけわからないよ。それに先輩と会う約束なんてしてない。」


「嘘吐かないで。ちゃんと本当のこと話して」


 和哉は全く信じてくれなかった。それどころか、二股かけていたのかと疑われたのだ。


「違うよ。本当に二股なんてかけてないし。どうして信じてくれないの?」


 そこで和哉はしばらく黙ってから、私を睨みつけた。その目は、今まで見たことのないような冷たく突き放すような目だった。


「最近の結麻は怪しかったし、俺と会ってない間、何してたか分からないよ」


 内緒でサッカーをしていたことが云い辛く、上手く言葉にならなかった。それは和哉に疑われ、信じて貰えないことがショックだったのかもしれない。


「浮気してたんだろ?」


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