午前0時のシンデレラ

こんなこと、泉さんは予想もしてなかったんだろうな。


「…ずっと、伝えられずにいました。あたしは、泉さんにたくさん救われたんです」


泉さんが淹れてくれるコーヒーは、あたしのだけ、少し甘めになっていた。


それが特別な気がして、毎晩屋敷を抜け出しては、あたしはその"特別"を求めた。


「心が挫けそうだったときも、落ち込んだときも。泉さんはいつだって、あたしに魔法をかけてくれました」


「…そんなこと、」


否定しかけた泉さんの言葉を、あたしは首を振って遮る。


「泉さんは、あたしの王子様だったんです」


それはもう、叶わないけれど。


でもあたしは、泉さんに救われた日々を、忘れたりはしない。


「咲良さん…俺…」


「あ!何も言わないでください!」


慌ててあたしはそう言うと、眉を下げている泉さんに笑いかけた。


さすがに、拒絶される言葉を直接聞けるほど、あたしは強くない。


…なんて、逃げなんだろうけど。


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