午前0時のシンデレラ

わりと小さい遊園地だけど、たくさんの人々で賑わっていた。


軽快な音楽が絶えず流れ、絶叫マシンからは、楽しそうな悲鳴が聞こえてくる。


動物の着ぐるみの周りには子供たちが群がり、色とりどりの風船を貰っていた。



そんな光景を、あたしはきょろきょろと見渡す。


「やっぱ初めてか?」


隣でそう訊かれ、あたしはムッとして柳を見た。


「悪い?」


「や。お前どこも出かけなさそうだなって思ったからさ」


「人を引きこもり扱いしないでよ」


「違うのか?あんなに街行くのすら嫌がってたくせに」


「あれはっ!…昔の話よ、昔の」


ぷいっと顔を背けると、柳の笑い声が聞こえた。


「悪い、いじめすぎた」


…いじめですって?ふざけんじゃないわよっ!


「一番怖いやつ乗るわよ!怖いやつ!」


「言っとくけど、俺絶叫強いからな」


得意顔の柳を連れて、あたしは『No.1絶叫!』と書かれたジェットコースターに向かった。


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