午前0時のシンデレラ

順番が回ってきて、安全バーを下ろすと、横から柳の視線を感じた。


「…何よ」


「お前、遊園地初めてなんだろ?絶叫平気なのかよ」


そういえば、柳の泣き叫ぶ顔が見たくて、一番怖いやつを選んだけど。


あたし…子供向けの絶叫マシンすら乗ったことないんだった。



あたしが口を開くより先に、ジェットコースターが発車した。


カンカンカン、という不気味な金属音と共に、コースターはどんどん高みへと上っていく。


ふと視界を落とすと、その地上からの高さに目眩がした。


「………」


「おい、大丈夫か?」


「………」


柳の言葉に答える余裕もなく、あたしはごくりと喉を鳴らす。


深呼吸をしようと息を吸った瞬間、コースターは落下した。


「―――きゃあぁぁぁぁああああッ!!!!」


死ぬ!死んじゃう!


…そう思ったのは最初のうちで、慣れれば恐怖は楽しみに変わっていた。


気づけば、あたしは他の人たちと同じように、悲鳴をあげながらジェットコースターを楽しんでいた。


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