午前0時のシンデレラ

ポカンと口を開けるあたしに、柳は微笑んだ。


「気にしてんだろ?昨日のこと」


「昨日の…」


もしかして。

あたしが、泉さんにフラれたこと?


あたしが元気ないって思って…それで、ここに連れて来てくれたの?


「取り敢えず、笑わせてやるしかないなって思ってさ。遊園地ぐらいしか思い付かなくて」


「………」


何それ。

そんな気遣い、いらないのに。


「こんな励まし方しかできない世話係でごめんな」


そう言って苦笑する柳に、あたしは何も言えなかった。


いろんな感情が、心の中で渦巻く。



…笑わせてやるしかないって、何よそれ。


何で遊園地しか思い付かないのよ。あたし、子供じゃないんだけど。


―――でも。



「…ありがとうっ…」



こんなに嬉しいのは、何でだろう?


「…ちょっ!? 何で泣く!?」


「………っ」


気づけばあたしは、公衆の面前で涙を流していた。


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