午前0時のシンデレラ

「もしかして、思い出したくもなかったか!?」


慌てふためく柳に、あたしは首を横に振る。


…違うよ。

泉さんのことは、自分でも不思議なほど、心残りはない。


こんなにも涙が止まらないのは、不器用な優しさが嬉しかったからだよ…柳。


「バカ…バカ柳」


「はい!? やっぱ俺のせい!?」


「…そうかも」


うん、やっぱり、柳のせいだ。


あたしの心を掻き乱しているのは、紛れもなく柳だったんだ。



胸の痛みも、苦しみも。

それを包み込むぐらいの、くすぐったい温かさも。


全部、柳のせいだ―――…


「…どうしたら許してくれますか?お嬢様」


ため息をついた柳は、困ったようにあたしを見た。


「………」


あたしはふと、視界に移ったものに目を奪われる。


「…あれ、乗りたい」


「あれって…はい?」


あたしが指差した先を、柳が追う。


< 145 / 200 >

この作品をシェア

pagetop