午前0時のシンデレラ
「もしかして、思い出したくもなかったか!?」
慌てふためく柳に、あたしは首を横に振る。
…違うよ。
泉さんのことは、自分でも不思議なほど、心残りはない。
こんなにも涙が止まらないのは、不器用な優しさが嬉しかったからだよ…柳。
「バカ…バカ柳」
「はい!? やっぱ俺のせい!?」
「…そうかも」
うん、やっぱり、柳のせいだ。
あたしの心を掻き乱しているのは、紛れもなく柳だったんだ。
胸の痛みも、苦しみも。
それを包み込むぐらいの、くすぐったい温かさも。
全部、柳のせいだ―――…
「…どうしたら許してくれますか?お嬢様」
ため息をついた柳は、困ったようにあたしを見た。
「………」
あたしはふと、視界に移ったものに目を奪われる。
「…あれ、乗りたい」
「あれって…はい?」
あたしが指差した先を、柳が追う。