午前０時のシンデレラ

間違ってない。

間違ったことは、言ってない。


…なのに何で、後悔してるの？


「………っ」


最後に一瞬だけ見えた、柳の表情。


―――泣き出してしまいそうな顔だった。


「バカ柳っ…！」


あたしの言葉に、傷ついた？


それとも、あたしをジュリアさんの代わりにしていたことを、申し訳なく思った？



…どっちでもいい。


柳があたしを見ていないことは、分かってるから。


「きついな…」


どこへ向かって走っているのかも分からないまま、そう呟いた。


泉さんにフラれて、柳にはあたし自身すら見てもらえなかった。


あたしは、物語のお姫様にはなれない。


―――シンデレラには、なれないよ。



途端に、また溢れ出る涙は、あたしの想いを流してはくれなかった。


無理だよ、柳。

嫌いになんてなれない。



…あたしはまだ、魔法をかけられることを望んでいるから。