午前0時のシンデレラ
光はあたしの涙を乱暴に拭うと、「つーかさ、」と口を尖らせた。
「最初っから、お前を連れてくつもりでここに来たんだっての」
「え?何で?」
「アイツ、鬼だろ。あんなやつに世話されてたら、俺の身が持たねーよ」
顔をしかめる光を見て、あたしは笑った。
きっと、すごい量の宿題出されたんだろうな。
「柳が世話するのは、あたしだけで十分よ」
そう、あたしだけ。
あたしだけに、魔法をかけて。
「…それ、本人に言ってやれよ?」
「当たり前でしょ?ほら、さっさとあんたんち行くわよ」
「すっかり元通りだな。咲良お嬢様」
「あらそれは光栄だわ、光お坊っちゃま」
あたしと光は顔を見合わせると、どちらともなく噴き出した。
…大丈夫、あたしはまだ笑える。
―――待ってなさい、柳。