午前0時のシンデレラ

放っといてくれればいい。


今まで長続きしなかった世話係みたいに、辞めればいいのよ。


あたしを置いて出ていったママみたいに、あたしの前から―――…



「何、泣いてんだよ」



突然掴まれた腕に、力がこもる。


先に進もうとしても、柳の手がそれを阻む。


「…はなして…泣いてなんか、ないわよ」


「嘘つけ。鼻水垂れてるぞ」


「鼻っ…!?」


振り返ってから、しまった、と思った。


ばっちりと合った柳の瞳から、目が…逸らせない。


「…嘘。鼻水はかろうじて垂れてない」


「………」


何で。

何であんたが、泣きそうな顔で笑うの。



この腕を、今すぐ振り払えばいい。


なのに…それができないのは、何でだろう。


「もう、なんなの…!」


自分のもどかしさにイライラして、声を荒げてみても、何も変わらない。


柳の瞳は、ただ真っ直ぐにあたしを見据えていた。


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