午前0時のシンデレラ
その瞳から逃れたくて、必死に言葉を探すあたしの耳に届いたのは、
「―――咲良さん?」
大好きな人の、声だった。
「い…泉さん?」
まさかの遭遇に、あたしは驚いて目の前の泉さんを見つめた。
「ど、どうして…」
「コーヒー豆の調達に来てたんだけど…どうしたの?」
泉さんの腕には、大きな紙袋がたくさんぶらさがっていた。
その紙袋を揺らしながら、泉さんがあたしの顔を覗き込む。
「…っ!」
慌てて涙を隠そうと、顔を背けて腕で拭ったけど。
「…泣いてるの?」
それがかえって不自然だったみたいで、泉さんに核心を突かれる。
…もう、最悪だ。
泣いてるところなんて、好きな人に見られたくないのに。
「…彼が原因?」
何も言えずに俯いていたあたしは、泉さんからかけられた言葉にパッと顔を上げる。
目を細めた泉さんの視線の先には―――複雑な顔をした、柳がいた。