午前0時のシンデレラ
「君は誰?」
泉さんの質問に、柳はすぐににこりと笑った。
「僕は、咲良お嬢様の世話係を勤めさせていただいている柳と申します」
「そう。君が、咲良さんの…」
柳は泉さんにじっと見つめられながらも、その笑顔を崩さなかった。
どうやらあたしの前以外では、その嘘くさい性格を突き通すつもりらしい。
…嘘くさいってゆうか、嘘の塊だけど。
「咲良さんを泣かせたのは、君なの?」
その問いに、柳は少しだけ笑顔を歪ませた。
肯定も否定もせず、ただ悲しそうに微笑んで…あたしを見た。
柳はきっと、全てをあたしに任せてる。
この場のあたしの一言が、自分の運命を左右すると、わかっていながら。
「―――違います」
気づけば、あたしはそう口にしていた。
「ちょっと…嫌な過去思い出しちゃって。あたしが勝手に泣き出したんです」
視界の端で、柳が驚いているのがわかる。