午前0時のシンデレラ

店内はもちろん、お店の外からも、何事かと人が集まってきていた。


…どっちが悪いのかなんて、池田に決まってる。


でも。

言い争う場所は、ここじゃダメだ。


「…さすが。わかってんじゃん、咲良お嬢さま?」


うるさいな、と口に出そうになった言葉を呑み込むと、あたしは微笑んでみせた。


「それほどでも。…光お坊っちゃま?」


あたしのその言葉に、柳が小さく反応して。

池田は、満足そうに笑った。


「―――光お坊っちゃま!」


バタバタと、数人の黒いスーツに身を包んだ男たちが店内に入って来た。


「どうなさいましたか!?」


「いや?何でもないさ」


池田は楽しそうにそう言うと、男たちを連れてお店を出た。


…最後に、あたしたちを振り返って、声を出さずに口の形だけでこう言った。



『―――――またな』



その笑みに、あたしはただ唇を噛みしめた。


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