午前0時のシンデレラ
じわり、と目頭が熱くなる。
でも、泣かないと約束したあたしは、何とか唇を噛みしめて涙を堪えた。
「―――はなしなさい、柳」
できるだけ凜とした声で、できるだけ強い口調でそう言った。
あたしを見る柳のきつい視線が、少しずつ和らいでいく。
「……悪い」
掴まれていた腕が、ふっと軽くなった。
あたしから離れると、柳は扉に向かって歩き出す。
「……っ、柳、」
「悪い、さっきの忘れて」
扉の前で立ち止まった柳は、振り返らずにそう小さく呟いた。
やっぱり柳は、勝手だ。
…あんな表情されて、忘れられるわけないじゃない。
ガチャ、と扉の開く音が響く。
あたしは思わず、その背中に声をかけた。
「―――柳!また明日ね!」
一瞬動きを止めた柳は、あたしを残して静かに扉を閉めた。