午前0時のシンデレラ

*‥‥‥‥‥


「…は―――…」


この日、あたしは何度目かわからないため息を零す。


「どうしたの?もう3回もため息ついてるけど」


泉さんが苦笑しながら、あたしにコーヒーを差し出した。


あたしのため息の数を数えていた泉さんに、何とも言えない笑みを返す。


「…あたしにも、よくわからないんです」


何で、こんなに気分が鬱なのか。

何で、胸の奥がモヤモヤしてるのか。


原因はもちろん柳なんだけど。


…問題は、何であたしが柳のことで悩まなきゃいけないのかってこと。


「うーん…」


「そんなときは、俺のスペシャルブレンド飲んでみてよ」


泉さんに勧められ、あたしはコーヒーを口に運ぶ。


こくん、と一口飲んだ瞬間に、口の中に甘みが広がった。


「………おいしい…!」


「よかった。いつもより甘くしてみたんだ」


泉さんの笑顔に、あたしの気持ちが少しだけ軽くなる。


< 58 / 200 >

この作品をシェア

pagetop