午前0時のシンデレラ
あのあと、夕食の時間になっても柳は顔を見せなかった。
パパにどうしたのかと訊かれたけど、あたしは「さぁ」としか答えることができなかった。
泉さんの淹れてくれたコーヒーのおかげで、身体がポカポカと温まる。
少しずつ飲み進めていると、泉さんの視線があたしに向いていることに気がついた。
「…泉さん?」
「その頬、どうしたの?」
…あーあ。
ファンデーションで隠したつもりだったけど、甘かったかな。
「えと…壁にぶつけて…」
我ながら、下手な言い訳だと思う。
泉さんは僅かに眉をひそめると、「ちょっと待ってて」と言い残して奥へと消えた。
「…?」
きょとんとしたまま泉さんがいなくなった辺りを眺めていると、すぐに泉さんが現れた。
「はい、これ」
泉さんがあたしに差し出したのは、
「湿布…」
そう、湿布だった。