午前0時のシンデレラ
「……泉さん」
「ん?」
でも、簡単には言えない。
どんなに好きでも、想いが溢れそうでも…言えないんだ。
「…っ、あはは、何でもないです!」
笑って誤魔化したあたしに、泉さんも笑う。
「あはは、俺を呼んでも何も出ないよ?」
「美味しいコーヒー出してくれるんじゃないんですか?」
「それなら、いくらでも」
ねぇ、泉さん。
あたしがどんなに泉さんに救われているか、泉さんは知らないでしょう?
今ここで言ったら、驚くかな。
…それとも、微笑んでくれる?
「泉さん、あたしそろそろ帰ります!…また、来てもいいですか?」
あたしは立ち上がると、泉さんに訊ねた。
いつもそんなことを訊かないあたしを、泉さんは少し不思議そうに見てから頷いた。
「もちろん。大歓迎だよ」
「…ありがとうございます」
あたしは微笑んだあと、ガウンを羽織り、もう一度泉さんにお礼を言ってからお店を出た。
外に出た瞬間、温まっていた身体がすぐに冷える。