午前0時のシンデレラ

「もしもーし?」


「………る」


「はい?」


「…生きて、る」


あたしがほとんど聞き取れないような、小さい声でそう言うと、柳は微笑んだ。


「よし。早く帰ろう」


頭を乱暴にぐりぐりと撫でられたことも。


そのあとすぐ、あたしの手を引いて歩き出した柳の手のひらの温もりも。


あたしの涙腺を緩ませるには、充分だった。



…けど。


"帰ろう"って、そう言ってくれた。


あたしが一番欲しい言葉を、柳は言ってくれたの。


それだけでもう…充分だよ。


「………ありがとう、柳」


お礼を言ったあたしに驚いたのか、柳が立ち止まって振り返る。


「…幻聴?」


「うんそう。もう二度と言わない」


そんな柳の態度に、あたしはわざと怒ったフリをする。


「あーうそうそ!どういたしまして!」


足早に歩き出したあたしの手を引っ張ると、柳は複雑そうな顔をした。


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