午前0時のシンデレラ
エンジンのかかる音に顔をしかめながら、あたしは口を開いた。
「不満に決まってるでしょ。あんたの運転下手くそだし」
「失礼だな。俺のスペシャルテクニック見せてやろうか?」
この空間に2人だけになったからか、柳は敬語をやめた。
「いらない」
即答すると、柳が苦笑する。
「さぁ、行きますか」
あたしが頷く暇もなく、車は発車した。
あたしたちの車(柳がカボチャの馬車だとか言ってたやつ)は、パパが乗る車の後ろにつく。
あたしはパパが乗る車を、羨ましそうに見つめた。
「…いいなぁ。快適そうで」
「何言ってんだよ。十分快適だろ?」
どこが。
そう言うのすら面倒くさくなって、あたしはミラー越しに視線で訴えた。
さっきからガタガタ揺れるのは、一体何でなの。
「帰りたい…」
快適とは言えない車で、大嫌いな相手の陣地に自ら足を踏み入れるなんて…最悪だ。