午前0時のシンデレラ
「安心しろよ。アイツにごめんなさいって言わせてやるから」
「無理でしょ」
得意気な柳を、あたしは一蹴した。
どこからそんな自信が出てくるのか、全く理由がわからない。
第一、柳はただの世話係で、池田はお坊っちゃま。
立場からして、柳の方が不利なのに。
「…無理でしょ、無理」
「何回も言うな」
そんな言い合いをしてる内に、池田の屋敷が近付いて来た。
その屋敷が放つ雰囲気に、思わず眉間にしわを寄せた。
パパが乗る車の横に停車すると、柳が扉を開ける。
「…到着致しました。お嬢様」
再び敬語に戻った柳だったけど、顔は「早く降りろ」とでも言いたげだった。
「はいはい」
「いっ…!?」
降りると同時に、柳の足を思いっきり踏んづけた。
痛みに呻く柳の横を、あたしはスルリと抜けてパパの元へと急ぐ。
…と言っても、ドレスが邪魔で走れないんだけど。