午前0時のシンデレラ
あたしが近づくと、ちょうどパパが車から降りてきた。
「…パパ!」
「咲良。どうした?」
「いつ帰…」
着いて早々、帰りのことを訊こうとしたけどやめた。
屋敷の中央にある大きな扉が…開いたから。
「ようこそお出で下さいました。王ノ宮殿」
扉の奥には、3つの影。
池田夫妻と…もちろん、その息子。
「既に大勢の方々が集まっています。さぁ、中へどうぞ」
そう言って、池田が一歩前に出て会釈した。
その口元がうっすらと不気味に微笑んでいるのは、絶対気のせいじゃない。
「いやいや、こちらこそ。お招き頂きありがとうございます」
パパは暢気に返事をし、会釈を返す。
あたしは池田を睨みながらも、礼儀として会釈をした。
「行こうか。咲良、柳くん」
パパはあたしたちを促すと、玄関への階段を上り始めた。
後ろを振り返ると、柳が微笑んで、あたしの手を引いた。