午前0時のシンデレラ
一歩一歩、階段を踏みしめる。
決して長いとは言えない距離が、永遠に続くかのように感じられた。
玄関の前には、池田がいる。
もう目前に迫っていた池田と、一瞬目が合うと、あたしはすぐに視線を逸らした。
「―――――…」
池田が何かを囁く声がして、あたしは逸らした視線をすぐに戻す。
けど、池田が不気味な笑みを向けた相手は、あたしじゃなかった。
驚いた表情で、池田を見つめる柳の横顔が目に入る。
「やな…」
話しかけようとすると、余計に強く柳に手を引かれ、あたしたちは開いた扉へと足を踏み入れた。
パパの後を追うように…もはや追い越す程の速さで、柳が歩く。
「ねぇ…、柳っ、何言われたのよ」
「………」
柳の無言から、決して良いことを言われたわけじゃないことだけはわかった。
なのに。
「柳っ!」
「心配しないで下さい」
…柳はあたしを、突き放す。