午前0時のシンデレラ
「…と、いうわけよ」
一気に話し終えると、唇を真一文字に結んでいる柳を見た。
「ね?楽しい話じゃないでしょ?」
肩を竦めてそう言うと、柳が口を開いた。
「…大丈夫だったのか?」
「は?」
「お前、襲われて…」
柳の言いたいことがわかって、あたしは苦笑した。
「大丈夫。相手の急所蹴っ飛ばして、全力疾走で逃げたから」
「!…ははっ、相手も気の毒だな」
男たちが、一瞬怯んでくれたからよかった。
そうじゃなかったら、あたしはもっとボロボロになってたかもしれない。
「…それからすぐ、あたしはパパに引っ越したいって言ったの」
あのときパパは、理由も訊かずに頷いてくれた。
でも、それからだっけ。
パパがあたしの世話係をしつこく探し始めたのは。
「一刻も早く、池田から離れたかった。あんなヤツと付き合ってたなんて、人生最大の汚点だわ」
吐き捨てるようにそう言って、あたしは唇を噛んだ。