午前0時のシンデレラ

あたしの接近に先に気付いたのは、パパだった。


「おお咲良、どこ行ってたんだ?」


「ちょっとね」


あたしはパパに微笑むと、池田の方を向く。


「あら光、パパと何話してたの?」


あたしに名前を呼ばれたことに、池田は僅かに眉を動かすと、すぐに笑った。


「咲良の事を話してたんだよ。最近会ってなかったから、知りたくてね」


…気持ち悪い。


そう言いそうになるのを堪えて、あたしは「そう」と気のない返事を返す。


「パパ。あたし、光と話したいことがあるんだけど」


「そうかそうか!久しぶりにゆっくり話しなさい」


パパは何故か嬉しそうにそう言うと、料理を手に持ったまま移動した。


その後ろ姿を見届けると、嫌な声が響く。


「どうした?お前から話しかけてくるなんて」


さっきとは違い、人をバカにするような声音に、あたしは振り返った。


「…悪い?」


「いや?嬉しいよ」


池田はニヤニヤと笑うと、柳に目を止めた。


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