午前0時のシンデレラ
「何だ、お前もいたのか。世話係だっけ?」
「はい。柳と申します」
柳がわざとらしい笑顔で答えると、池田は顔をしかめた。
「柳のことは放っといて。あんたの話し相手はあたしよ」
池田が柳に何か言う前に、あたしは池田を睨み付ける。
「さっきはよくも、白々しい嘘をついてくれたわね」
「嘘?…ああ、あれか」
さも今思い出したかのように、池田は驚いてみせた。
…そんな演技、もうあたしには通用しないんだから。
「失礼だな。俺は真実を述べたつもりだけど?」
「どこがよ」
池田の挑発に乗っちゃダメ。
そう言い聞かせて、あたしは再び口を開く。
「あたしはあんたのこと、好きなんかじゃなかった」
その言葉に、池田の表情が曇った。
「…へぇ?俺が告った時、すぐ返事したくせに」
「あれはあんたに弱みにつけこまれただけよ」
そう。
辛くて、悲しかったから…あたしは池田に逃げただけ。