王国ファンタジア【氷炎の民】外伝~新生~
第2章 氷炎の神子
 王国のはるか北。
 人の住まえる北限を超えて彼ら一族の地はあった。

 銀の髪と蒼き瞳。
 氷の神の化身のような姿を持ちながらも炎を操るという特有の力ゆえに、彼らはこう呼ばれる。
『氷炎の民』と。

 そしてまた彼らの力は単に炎を操るだけではとどまらない。
 この本来ならば、とても人が住めるはずもない極寒の地が、穏やかな気候に保たれているのは、彼ら一族の力と相殺されているに過ぎなかった。

 氷炎の民は、そこにいるだけで周囲の気温を上げる。己の内部に持つ強大な魔力を制御し切れず、漏れ出してしまうのだ。結果、集団となれば気候すらにも影響を与えてしまう。

 彼らが他の民との接触を避け、極寒の地をわざわざ選んで住んでいるのは故ないことではないのだ。

 しかし、例外はある。
 彼らの中にただ一人。力の完璧な制御ができるものが存在する。
 彼が扱えるのは炎だけではない。
 極寒から灼熱まで、彼は物の温度すらも自在に変えられる。
 その者は代々、サレンスと名づけられる。
 レジアスの目前で可愛い花嫁の仮装をさせられている子どもが、まさしく今世代のそれである。

 しかし、氷炎の民の子どもの力は感情のままに暴発しやすい。十六の誕生日を迎えるまで、力は封じられる。
 まだ五つにしかならないサレンスもまた例外ではない。
 今はまだ何の力も持たない幼子に過ぎなかった。
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