涙が愛しさに変わるまで
あのキスされた時みたいに熱くなることなんかない。
ただ寒気がして、気持ち悪い……。
「震えてるよ真依ちゃん?」
そういいながらもニヤッと笑う水野課長。
そして人差し指があたしの唇をなぞる。
「この唇……俺がもらっちゃおうかな?」
そしてだんだん顔が近づいてくる。
「ぃや……」
小さなあたしの声は水野課長の耳には届かなかった。
あと数センチ……もうダメだ……。
『♪ピーン。11階です。』
あたしがそう思った瞬間、エレベーターが止まった。
あたしがよかったと思ってる目の前で水野課長は舌打ちしてた。
「あー。いた。これから客が来るから早くこい!」
開いたエレベーターの前には腰に手をあてた桐沢社長が立ってた。